子どもたちが絵を描いたり、ものを作ったりする能力とその発達の過程は、
豊かな人間形成の過程の一環です

  • つくし保育園では、こどもたちの造形や表現活動をとりくむなかで、いろいろ試行錯誤を重ねてきました。子どもたちの表現を検討したり、研修(全国保育合研など)を受け学習を重ねたりする中で、描画の表現も、手・ことば・感情の働きなどと関連して成長、発達していくこと、豊かな表現の基盤は生き生きとした生活であることを学んできました。私たちは保育の中で、人間発達の道筋に沿って、それぞれの時期にふさわしい表現活動を保障していくことが、見る、聞く、話す(語る)力を育て、表現することができるようになることを知りました。
  • 「子どもたちの絵(描画)は、みるものではなく、聴くものであること、子どもの話を聴きながら共感を持って受け止めていくことが、子どもたちの表現意欲につながっていくこと」を確認し、描画に現れた子どもの表現から、保育を振り返っていくことを大切にしてきました。
  • 子どもたちの描く力は、全身の運動機能発達を基礎に手・ことば・感情の働き等、子どもの人格を形成する諸能力と密接な関連の基に発達していきます。
 
(トントン) (往復運動) (ぐるぐる丸)

なぐりがきが始まり肩を支点とした上下運動

肩と肘を支点に腕を半径とした左右の往復

肩と肘の協応見たてが大切

 
(閉じた丸) (ファンファーレ) (頭足人)

手の動きを自分でコントロール
できるようになる

つもり活動の始まり

仲間関係がでてくる

 
(羅列期) (展開表現) (基底線表現)

カタログのように並べて描かれている形、つながりに思いがこめられている

基底線が、四辺になり人物などが倒れたように描かれる

基底線がでて絵に上下ができると、絵でお話ができる

 

乳児期

乳児が描画活動をすることはありませんが、人としての基礎的な力
(土台)が作られる時期です。

  •  前半は、人間の基本的な感覚である「快、不快」を感じ分ける力が育つ時期です。「オムツが濡れて気持ちがわるいよ」、「おなかがすいたよ」等の要求で乳児が泣いて訴えることを、大人が受け止め要求を満たしてあげることで子どもは「気持ちのいい状態」を知っていきます。(感じ分ける力が育つ)
  •  後半は、運動能力の発達に沿って寝返り-ハイハイ-つかまり立ち-伝い歩き-ひとり立ち-歩行の獲得とからだの自由を獲得していきます。この時期の運動が、しっかりした足腰を作っていきます。そして手の働きが活発になり、探索活動をはじめるようになります。手、指先の動きが活発になり、ことばの獲得へとつながります。

1才過ぎ~
2才

足腰がしっかりし、
歩行ができるようになるとなぐりがきが始まります。

  •  手、指先は「つきでた大脳」といわれますが、手の働きが表舞台に登場してくるようになります。道具が使えるようになり、様々な変化する素材(水、土、砂など)に働きかけて遊べるようになり、楽しく遊べる仲間ができてきます。
  •  描画は、肩、肘の動きが出てくることから、トントン(点々)→弧状の往復運動→ぐるぐる丸(絵の笑顔)への表現となってきます。

2才過ぎ~
4才過ぎ

  • 「ジブンデ」、「ジブンガ」の自己主張を受け止めてもらいながら、「ジブンデできるもん」という自信につなげていく時期です。「大きい小さい」「自分と友だち」などの二つの世界が はっきりしてきます。運動機能の発達が大きく、話し言葉が確立される時期です。表現活動で大切な活動は、「思いを語ること」です。
  • ぐるぐる丸を描いた子どもは、そこに自分のイメージをのせていく「見たて」がはじまります。3才になると、自分の描きたいものをイメージした表現(~のつもり)ができるようになります。手首のコントロールができるようになるので、閉じた丸(ファンファーレ)が表現できる→大きな丸小さな丸(ダブルファンファーレ)二つの世界がはっきりしてくる→頭足人(宇宙遊泳のような形)→カタログ期(自分の描きたいものを画面に羅列するように描く)へとつながります。

4才から
5才児期

  • 自分で自分の生活をつくっていくことができるようになり、仲間のなかで自分をコントロールしようとするようになるのが5歳児期です。大中小の3つの世界が認識されるようになり、時間や空間の認識が育ってきます。手指の機能も巧みになり、描画活動は、単に絵を描く活動だけではなく、感情とことばを合わせ含んだ活動になります。大人が、子どものことばに共感を持って受け止めることで、子どもの感情をよりそだてることになります。幼児にとって絵は、生きた具体的なことばです。豊かな話し言葉は、生き生きとした生活の中からうまれ、話し言葉の充実が、ことばで考え、行動をコントロールする力になっていきます。
  • レントゲン技法(目に見えるはずのない物も描く→基底線表現(上下左右の空間認識が育ってくる)→展開表現となってきます。

5才~8才過ぎまで

  • 知的リアリズム期。伝えたい真実をお話しするように描く時期です。外界をことばで置き換えるようにとらえて(解釈し)、構成して描きます。
  • 話し言葉に即して、絵で関連や状況を叙述する時期です。空間的にも、伝えたい思いをまとめ上げつつ表現することができるようになります。
  • 経験をくぐって、過去、現在、未来の時間軸が形成されます。